1970年代から今日まで続く日本の〈アートハウス〉は、“ミニシアター”という呼称で親しまれてきました。ここは世界中の映画と刺激をもとめる観客とが出会う場所。多様な映画体験によって、未来の映画作家だけでなく、さまざまなアーティストを育む文化的ビオトープとしての役割を担ってきました。上映されるのは、ただ楽しむための作品だけではありません。目を覆うほどグロテスクで、心をズタズタに引き裂く映画もあれば、ため息が出るほど美しい眼福の映画もあります。〈アートハウス〉の暗闇でスクリーンが反射する光を浴びることは、多かれ少なかれ——私たちの生き方を変えてしまう体験なのです。
連続講座「現代アートハウス入門」では、〈アートハウス〉の歴史を彩ってきた「ネオクラシック(新しい古典)」と呼びうる作品を7夜連続日替わりで上映。気鋭の映画作家たちが講師として登壇し、各作品の魅力を解説。さらに、全国の参加者とのQ&Aを交えながら、これからの〈アートハウス〉についての知見を共有します。第2弾となる今回は、全国24の劇場をつないで開催。どうかふるってご参加ください。
失業者のサブジアンはバスで隣り合わせた裕福そうな婦人から読んでいた本について聞かれ、なりゆきから自分が著者で映画監督のマフマルバフだとつい偽ってしまう。婦人の家に招かれた彼は、映画の話を情熱的に語るうちに、架空の映画製作の話にこの家族を巻き込み…。映画監督だと身分を偽り、詐欺で逮捕された青年の実話をもとに、再現映像とドキュメンタリーを交差させて描いた異色作。
アッバス・キアロスタミとモフセン・マフマルバフの傑作群は、まだ二十歳前後であった私をイラン映画に心酔させた。『クローズ・アップ』は中でも特に熱狂した一作で、映画の底なしの可能性をこの作品で感じて欲しい。
マッチ工場で働くイリスは、母と義父を養っている。ある日、給料でドレスを衝動買いしてしまった彼女は、義父に殴られ、母からドレスの返品を命じられる。ついに我慢できなくなった彼女は、家を飛び出しディスコで出会った男と一夜を共にするが、その男にも裏切られ…。何の変哲もない娘のどん底の人生を淡々と描き、絶望的な状況になぜか笑いが込み上げてくるアキ・カウリスマキ映画の真骨頂ともいえる一作。
「クラシック映画」と聞くと身構えてしまう人もいるかもしれませんが、それらは製作されてから何十年も、多くの人を魅了してきました。そんな映画の抗えない魅力を、一緒に反芻していく時間になればと思っています。
16世紀にアンデスを「征服」したスペイン遠征隊の行為を、批判的に描く映画を製作しようとした撮影隊が直面した現実とは? 撮影に訪れた先住民の村で「ここから出ていけ!」と詰め寄られた映画人たちは、やがて問題の本質に気づく。アンデス世界の価値観に基づく独自の映画言語でゴダールらにも衝撃を与えたボリビア・ウカマウ集団の代表作の一つ。ロカルノ国際映画祭「質と刷新」賞受賞。
アートハウスはあやしげな場所に見えることもあるかもしれませんが、それ以上に妖しい映画がかかっています。
鑑賞後はより健全に、より不健全に、もしくはその両方になるかもしれません。
あの映画のここは好きであそこは苦手など、誰かに言いたくなって、伝わらなくて、その体験まるごと、心のどこかに残り発酵していく映画がかかっています。
ボストンからフロリダへ。聖書の訪問販売員たちの旅にカメラは密着する。彼らが訪ねるのは教会の信者で、一人暮らしの未亡人や、難民、部屋代も払えない子持ち夫婦など。安いモーテル、煙るダイナー、郊外のリビング、月賦払い…。物質主義的社会の夢と幻滅、高揚と倦怠が奇妙に交差する、アメリカの肖像画。ダイレクトシネマのパイオニア、メイズルス兄弟のマスターピースを本邦初公開。
真っ白で空虚なスクリーンなのに、いや、真っ白で空虚なスクリーンだからこそ、いったい何が映し出されるのか、無限の可能性が存在しているんですね。なんだか不思議じゃないですか?!
修道女を目指すビリディアナは、叔父の屋敷に呼び出される。叔父は亡き妻に似た彼女を引き止めようと嘘をつくが、それに気づいた彼女は家を去る。絶望した叔父は自殺。責任を感じた彼女は貧しい人々を屋敷に住まわせ世話しようとするが…。カンヌ国際映画祭パルム・ドール受賞の一方で、カトリック教会から大きな非難を浴び、本国スペインやイタリアで上映禁止に至った問題作。
ああ、そうか、自分はこの世界に対して、「ちょっと待った」を言いたかったのだと気づかされる映画がある。新しいものの見方を発見し、立ち止まって何度も考え、答えのない旅に出る。いい映画には共感や同調よりも、もっと豊かで驚きに満ちたものが、色褪せることなくたくさん詰まっている。
パリ、1960年、夏。街ゆく人々に軽量16ミリカメラと録音機が問いかける。あなたは幸せですか? あるいは、愛、仕事、余暇、人種問題について…。作り手と被写体とが制作プロセスを共有することで、映画が孕む作為性や政治性が明らかになり、リアルとフィクションの概念が問い直される。映画作家で人類学者のルーシュと、社会学者で哲学者のモランによるシネマ・ヴェリテの金字塔。
学生の頃に偶然観ていた映画が、数年経ってから、自分にとっての大切な一本だったと気付くことが増えました。
途切れ途切れに蘇ってくる場面は、あの時わからなかった経験も、大事なものだと教えてくれました。
結婚8年目、一見仲の良いカテリーナとアレックスは、実は破局寸前。ベズビオ火山、ポンペイの遺跡、カプリ島などをめぐりながら、二人は離婚へと突き進んでいくのだが…。ロッセリーニは、バーグマンとサンダースに即興的な演技を求め、生々しい感情のゆらぎをフィルムに焼き付けた。ゴダールに「男と女と一台の車とカメラがあれば映画は撮れる」と言わしめたネオ・レアリズモの大傑作。
「人生は短すぎる」「だからこそ楽しまないと」いつどこでなぜその言葉が発せられるのか。私はその場面においてなにを見ていただろう?
地域 | 劇場名 | 開催日程 | 開映時刻 |
東京 | ユーロスペース | 12/11(土)~17(金) | 連日19:00 |
東京 | シネマネコ | 12/11(土)~17(金) | 連日19:00 |
神奈川 | シネマ・ジャック&ベティ | 12/11(土)~17(金) | 連日19:00 |
群馬 | シネマテークたかさき | 12/11(土)~17(金) | 連日19:00 |
宮城 | フォーラム仙台 | 12/11(土)~17(金) | 連日19:00 |
山形 | フォーラム山形 | 12/11(土)~17(金) | 連日19:00 |
福島 | フォーラム福島 | 12/11(土)~17(金) | 連日19:00 |
新潟 | 新潟市民映画館 シネ・ウインド | 12/11(土)~17(金) | 連日19:00 |
石川 | シネモンド | 12/11(土)~17(金) | 連日19:00 |
富山 | ほとり座 | 12/11(土)~17(金) | 連日19:00 |
長野 | 長野相生座・長野ロキシー | 12/11(土)~17(金) | 連日19:00 |
愛知 | 名古屋シネマテーク | 12/11(土)~17(金) | 連日19:00 |
大阪 | シネ・ヌーヴォ | 12/11(土)~17(金) | 連日19:00 |
大阪 | 第七藝術劇場 | 12/11(土)~17(金) | 連日19:00 |
京都 | 京都シネマ | 12/11(土)~17(金) | 連日19:00 |
兵庫 | 元町映画館 | 12/11(土)~17(金) | 連日19:00 |
鳥取 | ジグシアター | 12/11(土)~17(金) | 連日19:00 |
広島 | 横川シネマ | 12/11(土)~17(金) | 連日19:00 |
広島 | シネマ尾道 | 12/11(土)~17(金) | 連日19:00 |
愛媛 | シネマルナティック | 12/11(土)~17(金) | 連日19:00 |
福岡 | KBCシネマ1・2 | 12/11(土)~17(金) | 連日19:00 |
大分 | シネマ5 | 12/11(土)~17(金) | 連日19:00 |
熊本 | Denkikan | 12/11(土)~17(金) | 連日19:00 |
沖縄 | 桜坂劇場 | 12/11(土)~17(金) | 連日19:00 |